プリウスミサイル vs 左足ブレーキ

2019年7月2日

最近ネットで「プリウスミサイル」という言葉をよく目にするようになりました。
プリウスなどのジョイスティック式シフトレバーとその独特な操作方法が、予期しない発進を引き起こして事故に至ることをプリウスミサイルと言っているようです。

暴走事故のニュースでプリウスが事故を起こしているニュースを目にすることは確かに多いのですが、プリウスは販売台数も多いので、事故を起こす台数も必然的に多くなります。
個人的にはプリウスのような一般向け量販車で、シフトレバーの操作方法を変えてしまうのは根本的にまずいと思いますが、暴走事故はプリウスに限った話ではありません。

 

プリウスの事故が起こる経緯

ネットで検索すると、プリウス独特のシフト操作から起こりうる急加速の原因について書かれたものがたくさんありますし、YouTubeではプリウスが暴走する原因を検証した動画もいくつかアップロードされています。

 

急加速に至る経緯を簡単にまとめてみると、車両が停止している状態で、
1.何らかの原因でセレクターがニュートラルに入っている
2.何らかの原因でアクセルをベタ踏みしている
3.セレクターをドライブに入れる
4.急加速する

ということのようです。

エンジン車であればアクセルを誤って踏んだ時点でエンジンが吹き上がるので気がつきますが、プリウス等のハイブリッド車やEV車はアクセルを床まで踏んでもその時点では何の反応もなかったり、エンジンがかかっていてもアイドリングのままだったりするため、ドライバーはアクセルを踏んでいることに気づきません。
この状態で、ブレーキペダルを踏まなくてもセレクターをNからDに動かす操作を受け付けるため、アクセル全開のまま急発進します。セレクターはリバースにも入るため、後ろに急発進ということも起こりえます。

 

多くのAT車はブレーキペダルを踏まなくてもNからDに入る

ブレーキペダルを踏まなくてもNからDに入るというのはプリウスに限った話ではなく、AT車の多くはそのような操作ができるようになっています。

【週刊クルマのミライ】痛ましい事故を防ぐため、ATで「N」から「D」に入れるときにブレーキ操作が必要?
https://clicccar.com/2019/06/08/840886/

最近では「プリウスのATは、ブレーキを踏まずにN(ニュートラル)からD(ドライブ・前進)に入れることができるのが事故の原因だ」という主張が流行り、検証動画をアップするユーザーもいるようですが、国産車のATでNからDにシフトする際にブレーキを踏む必要があるタイプは皆無で、プリウスに限った話ではないのです。仮に、そのように操作できることが問題だとすれば国産車のAT全般の課題ということになります。

国産車のAT全般が、NからDやRに入れる際にブレーキを踏む必要がない仕様となっているのは、それなりの合理性があるのでしょうが、けっして最適解ではないといえます。

 

左足ブレーキでは、NからDに入れるときもブレーキペダルは踏んだまま

左足ブレーキでは、停止時にセレクターがパーキング以外に入っている場合は基本的にブレーキペダルを踏んでいます。
従って、セレクターをNからDに動かすときもブレーキペダルは踏んだままです。発進しようとするときにドライバーが自分の意思でブレーキを緩めるまで、ずっと踏んだままです。

右足ブレーキでは、アクセルペダルの上に足があるとブレーキペダルを踏むことはできません。
つまり、引用した記事のタイトルになっている、「ATで『N』から『D』に入れるときにブレーキ操作が必要?」という質問は、右足ブレーキに対する問いということになります。

では、アクセル全開でセレクターをNからDに入れた場合、左足でブレーキを踏んでいることがどれだけ急発進・急加速を押さえるか、ということになると、自分ではやったことがないのでわかりません。
ストールテストみたいに意識的にブレーキペダルを強く踏んでいるわけでもないでしょうし、急発進はしないまでも動き出すことは十分あり得ます。

もっとも左足ブレーキの場合、アクセルとブレーキペダルの上げ下げ操作は基本的に逆になる(アクセルとクラッチの関係と同じ)ので、両方のペダルを踏んだままにするということは普通はありません。

しかし左足でブレーキを踏んでいるのにもかかわらず、もし動き出してしまったら、自分がどちらのペダルを踏んでいるのかわからなくなってブレーキペダルを離してしまうということは起こりえます。
それでも、ブレーキペダルの上に足が載っているので暴走を押さえられる可能性はあります。右足ブレーキでは、こういった予防策や回避策が何もありません。

いずれにしても、いちばん避けなければならないのは、アクセルペダルだけを踏み続けて暴走することです。