WRC競技ガイド

2019年10月3日

ラリーの主な日程は1週間ほどで行なわれる。ここでは2003年以前の、スタンダードなラリー進行に基づいて解説する。

基本的には次のようなスケジュールで進行していく。

 

レッキ

まず日曜~火曜日にレッキと呼ばれるコースの下見を行う。レッキは通常2~3日間ほど行われている。

レッキでは、ペースノートと呼ばれるノートを作成する。ペースノートとは、競技に使われるコースを「スタート→直線100m→右のゆるいカーブ→直線30m→左の急カーブ」などというように、コースの状況を記入しておくノートのことだ(実際にはもっと複雑で細かく書いてある。別項参照)。

このノートをラリー競技中にコ・ドライバーが読み上げ、それを聞きながらドライバーが運転する。

 

シェイクダウンと車検

レッキの後の水曜日~木曜日頃に、半日ほどシェイクダウンと呼ばれるテスト走行が行われる。

これも公道に、専用のコースが用意される。ここをレーシングスピードで走り、ラリーカーの最終調整をする。また、このシェイクダウンの前か後に車検(スクーティニアリング)が行われる。車両の整備の状態や重量測定、パーツが認定されたものを使っているかなどのチェックがある。

ラリー終了後にも、上位入賞者は車検を受けるが、この競技終了後の車検で認証を取っていないパーツが引っかかったり、重量が規定より軽かったりして、優勝を取り消されたりすることもたびたびある。

 

デイ(2007年まではレグ)

WRCは基本的に金曜日から日曜日の3日間が競技日になる。木曜日の夜にオープニングイベントを兼ねたSSSが行われることもあり、4日間の開催になることも多い。

ラリーの日程をいくつかに区切り、デイという単位で分ける。例外もあるが、通常は3日間のラリーでは1日目がDAY1、2日目がDAY2、3日目がDAY3となる。デイの中にセクションという単位があり、これはリグループ毎に分けられる。

デイ1から実際の競技が始まり、ラリーはアイテナリー(タイムテーブル)と呼ばれる日程表に則って進められる。

 

スタートセレモニーとスーパーSS

木曜日の夕方に、スタート台から1台ずつスタートするセレモニーが行われ、いよいよラリーの始まりとなる。

スタートセレモニーのあとにスーパースペシャルステージ(以下スーパーSS)が行われることもある。

スーパーSSは観客の入ったスタジアムや特設会場などで行われる、ショー的な意味合いが強いイベントだ。金曜日と土曜日の最終SSがスーパーSSの場合もある。
スターティングセレモニーやスーパーSSのあと、ラリーカーはサービスパークで整備され、パルクフェルメで翌朝まで保管される。

 

ロードセクション(リエゾン)

通常は金曜日の朝、レグ1からラリーが始まり、アイテナリーの時刻に沿ってラリーカーが順次スタートしていく。

アイテナリーに記載された時刻は最初の1台目のもので、それ以降、通常は2分おきに次の車が出発していく。途中から競技車両のクラスが変わると1分おきになる。

スタート地点を出発したラリーカーは、一般道を一般車両に混じって走っていき(この移動区間をロードセクションとか、リエゾンという)、決められた時間にタイムコントロール(TC)に到着する。TCに入る時間は決まっていて、到着が早すぎても遅すぎてもペナルティを課せられる。TC区間の中にスペシャルステージのスタート地点がある。

ロードセクションは閉鎖されない一般道のため通常の道路交通法が適用される。ときどきスピード違反等でドライバーが違反切符を切られたり、破損した車両を警察官が止めて自分の判断で走行を中止させることがある。

 

タイムコントロール

スターティングリッドに全車が並んで、ヨーイ・ドン式のサーキットレースは、計時は一度で済むが、ラリーでは1台ずつ走行し、SSや移動区間で1台1台タイムを計っていく。

移動区間の交通事情などもあるため、生じる時間差を吸収する必要もある。このために作られているのがタイムコントロールエリアだ。

SSのスタート地点とゴール地点はタイムコントロールエリア内にある。ラリーの車載カメラ映像を見ていると、丸い絵の描かれたボードの間を通過するシーンがよく見られるが、コントロールエリアの開始から終了までこれらのボードが表示されている。

コントロールエリア内への入り方から、エリアの終了まではこちらに記載した。

 

スペシャルステージ

スペシャルステージ(以下SS)は、一般車両の入れないタイムトライアル区間になる。1回のラリーで1日あたり4~8回程度、合計で20箇所ほどのSSが設定される。出場者はこのSSで全開走行し、タイムを記録していく。

3日間全てのSSのタイムを合計し、ペナルティを受けた場合はペナルティタイムも合計時間に加算される。その合計時間がいちばん短い選手が優勝となる。

SSのスタート間隔は通常ワークスカーで2分おき、他は1分おきになるが、ほこりが激しく舞って収まりにくい道路を使用する場合は3分おきになることもある。

SSの距離は短いもので2km、長いものでは50kmほどある。

SSの合計距離は400km(±10%)(2005年以降は短縮され340~360Km)。

移動区間も含めた全走行距離は3日間で1000~2000km程度になる。SSの距離や全走行距離は、WRCが始まったころに比べるとかなり短くなり、将来的にも短縮傾向にある。

SSは一般車両の通行を禁止して閉鎖し、参加車両のみ走れるようにした区間になるが、サファリ・ラリーのように道路を閉鎖することが不可能なためそのままタイムアタックを行う場合もあり、この区間のことはコンペティティブ・セクション(CS)という。

 

SSゴールのあとは

ラリーはフライングフィニッシュ(全開走行のままゴールを通過)でSSを終える。このゴール地点の前後もTC区間となる。

SSをゴールしたあとは、またロードセクションを走り、次のSSのスタート地点に向かい、またタイムアタック。これを繰り返す。

途中でサービスがある場合はマシンの整備や修理、給油やタイヤ交換などを行う。サービスを受けられる時間も決められていて、超過した場合はペナルティタイムが加算される。また、リグループという時間調整や崩れた隊列を整えるなどのために一定時間停車させる場所もある。

1日の競技を終えたラリーカーはサービスパークで整備や修理などを行い、パルクフェルメに入って保管される。翌朝、短いサービスを受けてラリーカーは再びSSに向かう。

1日目と2日目は、ラリーカーが戻ってくるのは夜になるが、3日目は表彰式が午後4時頃行われるため、午後のSSは早めに終了する。

表彰式を行って、3日間の日程を終えるとラリーは終了となる。

 

ポイント

順位に従ってドライバーとコ・ドライバー、マニュファクチュアラー(自動車メーカー)にポイントを与え、年間の合計ポイントで選手権タイトル獲得者が決定する。ドライバーとマニュファクチュアラーは、この年間タイトルを得るために鎬を削るのである。

2019年のポイントは以下の通り。

 

ドライバーとコ・ドライバーにはパワーステージのボーナスポイントが加算される。

 

毎年11~12月にチャンピオンが決定すると、休む間もなく次の年の1月に行われるモンテカルロ・ラリーに向けてテストを開始する。

 

アイテナリーの読み方


これは2004年モンテカルロ・ラリーのタイムテーブル(出典:http://www.acm.mc/ 2003年11月)

SECTION1の0の行から見ていくと、TALLARDのサービスパークを最初の1台が出発していく(Départ 1e voiture à)のが朝7時00分。

書いてある時刻は最初にスタートする車のもの。2台目以降は規定時間(通常は2分)おきにスタートしていく。

次の行に移り、Liaison(移動区間)の33.79KmをTemps idéal(=Ideal time/Target time:想定時間)45分で走ってSELONNETのスタート地点に到着するのが7時45分。

ES1(SS1)を7時48分にスタート、競技開始。ES1は22.64Km。

ES1終了後、ES2のスタート地点PIEGUTに到着するのが8時23分。

8時26分からES2がスタート。これを繰り返す。

Les Étapes
1e Étape : Tallard / Monaco – Vendredi 23 janvier 2004
CH Lieu
ES
Liaison
Total
Temps
Départ 1e voiture à
ES
km
km
km
idéal
SECTION 1
0 TALLARD Aérodrome – DEPART 1e ETAPE
7:00
1 SELONNET
33,79
33,79
45
7:45
ES 1 SELONNET – BREZIERS
22.64
7:48
2 PIEGUT
8,26
30,90
35
8:23
ES 2 PIEGUT – URTIS
20,18
8:26
2A Assistance – Entrée
8,31
28,49
35
9:01
ASSISTANCE A (TALLARD)
42,82
50,36
93,18
20
2B Assistance – Sortie
9:21
3 SELONNET
33,79
33,79
45
10:06
ES 3 SELONNET – BREZIERS
22,64
10:09
4 PIEGUT
8,26
30,90
35
10:44
ES 4 PIEGUT – URTIS
20,18
10:47
4A Parc de regroupement – Entrée
8,28
28,46
35
11:22
Parc de regroupement (TALLARD)
15
SECTION 2
4B Parc de regroupement – Sortie / Assistance – Entrée
11:37
ASSISTANCE B (TALLARD)
42,82
50,33
93,15
20
4C Assistance – Sortie
11:57
5 LABOREL
50,38
50,38
1,05
13:02
ES 5 LABOREL – LBERGERIE
26,68
13:05
6 ROSANS
5,07
31,75
40
13:45
ES 6 ROSANS – LINE
31,81
13:48
LINE (Carburant)
2,59
6A Assistance – Entrée
52,27
86,67
1.35
15:23
ASSISTANCE C (TALLARD)
58,49
110,31
168,80
45
6B Assistance – Sortie
16:08
ST-ANDRE-LES-ALPES (Carburant)
110,01
6C MONACO (Parc Fermé) – ARRIVEE 1e ETAPE
122,97
232,98
3.4
19:48
(pointage en avance autorisé)
1e Étape : tot.
144,13
443,98
588,11
2e Étape : Monaco / Monaco – Samedi 24 janvier 2004
CH Lieu
ES
Liaison
Total
Temps
Départ 1e voiture à
ES
km
km
km
idéal
SECTION 3
6D MONACO – DEPART 2e ETAPE – Parc Fermé (Sortie) – Assistance (Entrée)
6:40
ASSISTANCE D (MONACO)
20
6E Assistance – Sortie
7:00
7 LANTOSQUE
64,84
64,84
1.15
8:15
ES 7 LANTOSQUE – COL DE BRAUS
34,41
8:18
7:00 AM Assistance – Entrée
40,91
75,32
1,25
9:43
ASSISTANCE E (MONACO)
20
7 B Assistance – Sortie
10:03
8 TOURETTE DU CHATEAU
59,72
59,72
1,15
11:18
ES 8 TOURETTE DU CHATEAU – SAINT ANTONIN
24,80
11:21
9 SIGALE
10,22
35,02
40
12:01
ES 9 SIGALE – COL DE BLEINE
28,39
12:04
GREOLIERES (Carburant)
14,81
9A Parc de regroupement – Entrée
68,58
111,78
1,55
13:59
Parc de regroupement – (MONACO)
15
SECTION 4
9B Parc de regroupement – Sortie / Assistance – Entrée
14:14
ASSISTANCE F (MONACO)
53,19
153,33
206,52
20
Assistance – Sortie
14:34
10 TOURETTE DU CHATEAU
59,72
59,72
1,15
15:49
ES 10 TOURETTE DU CHATEAU – SAINT ANTONIN
24,80
15:52
11 SIGALE
10,22
35,02
40
16:32
ES 11 SIGALE -COL DE BLEINE
28,39
16:35
GREOLIERES (Carburant)
14,81
11:00 AM Assistance – Entrée
70,04
113,24
1,55
18:30
ASSISTANCE G (MONACO)
53,19
154,79
207,98
45
11 B Assistance – Sortie
19:15
11 C MONACO (Parc Fermé) – ARRIVEE 2e ETAPE
02,20
02,20
8
19:23
(pointage en avance autorisé)
2e Étape : tot.
140,79
416,07
556,86
3e Étape : Monaco / Monaco – Dimanche 25 janvier 2004
CH Lieu
ES
Liaison
Total
Temps
Départ 1e voiture à
ES
km
km
km
idéal
SECTION 5
11D MONACO – DEPART 3e ETAPE
7:30
Parc Fermé (Sortie) – Assistance (Entrée)
ASSISTANCE H (MONACO)
20
11E Assistance – Sortie
7:50
12 SOSPEL
35,53
35,53
52
8:42
ES 12 SOSPEL – TURINI – LA BOLLENE
32,58
8:45
13 LANTOSQUE
6,18
38,76
50
9:35
ES 13 LANTOSQUE – LUCERAM
19,62
9:38
13A Assistance – Entrée
40,67
60,29
1,12
10:50
ASSISTANCE I (MONACO)
52,20
82,38
134,58
20
13B Assistance – Sortie
11:10
14 SOSPEL
35,53
35,53
52
12:02
ES 14 SOSPEL – TURINI – LA BOLLENE
32,58
12:05
15 LANTOSQUE
6,18
38,76
50
12:55
ES 15 LANTOSQUE – LUCERAM
19,52
12:58
15A Assistance – Entrée
40,67
60,29
1,12
14:10
ASSISTANCE J (MONACO)
52,20
82,38
134,58
20
15B Assistance – Sortie – ARRIVEE FINALE
14:30
3e Étape : tot.
104,40
164,76
269,16

 

ペースノートの読み方


 

表記/読みなどの一例

曲がる角度(ベンド):図を参照

Numbersは数字式、Descriptiveは記述式

2番目に緩い右カーブは1R(ワンライト) or ER(イージーライト)などと表す。

ペースノートの表記例  ( )内は一般的に使われる書き方

直線距離:(50)(フィフティ)、(100)(ワンハンドレッド)など。into (→、-)

and (+)

コーナーの回りこむ長さ long(Lg)、verylong(VLg)、short

クレスト crest (C) 坂の頂上

コーション caution (!) 注意すべき場所。

危険度が上がるとダブルコーション(!!)、トリプルコーション(!!!)となる。

don’t cut (DC)インカット不可。

keep in (KI)

keep left (KL)

keep right (KR)

bridge( ][ )

opens( < )

tightens ( > )

over ( / )

blip( ● )

narrow

underlined (R4 L4)...連続したコーナー

ditch...溝

SSスタート地点のタイムコントロール


 

図の下部、タイムコントロールが始まる地点からの説明

1.時計の絵が描かれた黄色のボード

ロードセクションを通ってタイムコントロール地点に到着し、定められた時間に到着したことを計測する場所。この手前では時間より早く着いたラリーカーが通過時間になるのを待っていることがある。コントロールエリア内への進入は、TC-inに指定された時間の1分前から。この時間を守らなかった場合は、早着1分につき60秒、遅着1分につき10秒のペナルティが加算される。

ここからコントロールゾーンが始まる。コントロールゾーン内はパルクフェルメと同じ扱いになり、車両整備などは禁止されているが、窓ガラスを拭くのは許可されている。

2.時計の絵が描かれた赤いボード

1のボードを通過して、10~25メートルほど進むと2のボードがある。オフィシャルがタイムカードに時刻を記入する場所。この場所をコントロールポストという。記入する時刻は通過時間になるが、そこがSSのスタート地点である場合、SSのスタート時間も記入する。

3.旗を閉じた(旗の端を手で持っている)絵の赤いボード

SSのスタートライン カウントダウン式のシグナルがスタートの合図。昔のラリーはオフィシャルが指で3、2、1と示してスタートさせていた。

4.斜めの3本線が書かれたベージュのボード

SSをスタートして20メートルほど走るとこのボードがある。コントロールゾーンの終わりを示す。

 

SSフィニッシュ地点のタイムコントロール

 

図の下部、SSフィニッシュ予告からの説明

SSフィニッシュ地点が近づくと、以下のような進行になる。

5.チェッカーフラッグの絵が描かれた黄色いボード

SSのゴール100メートル手前で表示される、フィニッシュ予告のボード。ここからコントロールエリア開始。この地点から6のフィニッシュ地点を通り過ぎるまでは停車厳禁。停車すると失格になる。

6.チェッカーフラッグの絵が描かれた赤いボード

SSゴール。ラリーはフライングフィニッシュなので減速せず通り抜ける。

7.STOPと描かれた赤いボード

SSフィニッシュ後、計測タイムを記入してもらうストップコントロールという場所。ここに通過した車のタイムを記入したボードが掲示してあり、先にフィニッシュした車のタイムを知ることができる。車載カメラの映像でドライバーたちがじっと見つめているのはそのボード。

8.コントロールエリア終了のボード

SSの開始から終わりまでは以上のように進行する。この他に、通過タイムを記入するだけのコントロールエリアもある。その場合は、1、2、4のボードを通過する。

サファリなどCSでタイムを計測するラリーでは、TCからTCの間がタイム計測区間になり、上記にあるようなスタート/ゴール地点はない。

ボードの近くで観戦するときは、ボードとボードの間は光電管などでタイムを計測するようになっているところがあるので、横切らないように注意すること(オフィシャルに制止されるはず)。

 

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Posted by takumi-ya