【読みだしたら止まらない本 25】 アンドロメダ病原体 / マイクル・クライトン
事件はアリゾナ州の小さな町、人口48人のピードモントで起きた。町の住人が一夜で全滅したのだ。軍の人工衛星が町の郊外に墜落した直後のことだった。事態を重視した司令官は直ちにワイルドファイア警報の発令を要請する。宇宙からの病原体の侵入――人類絶滅の危機にもつながりかねない事件に、招集された四人の科学者たちの苦闘が始まる。
https://www.amazon.co.jp/アンドロメダ病原体〔新装版〕(ハヤカワ文庫NV)
人工衛星の着地したアメリカの小さな街は瞬く間に人々が倒れ、ゴーストタウンと化します。未知の病原体が宇宙から運ばれてきたのか? 調査にあたったプロジェクトチームの5日間をドキュメンタリータッチで描いた作品。
医学部出身のクライトンはその知識を生かして緻密な描写をしています。医学的知識の薄い読者には少々わかりにくいところもありますが、未知の病原体を特定していくための作業の過程などは、今のご時世もあり興味深いところです。
久しぶりに再読。テンポが遅めでラストもちょっと...というクライトン作品としてはいまいちな一冊。
すべての危機に共通する特質の一つは、かえりみて充分に予測可能だという点である
この小説を初めて読んだ時から、ストーリーは忘れてしまっているにもかかわらずずっと覚えていたフレーズがありました。
有名な学者アルフレッド・ポクランは、危機を考察した自著(『文化、危機、変化』)の中で、いくつかの興味ある点を指摘している。まずポクランは、あらゆる危機が実際の発生時点のはるか以前にその起源を持っている、と述べた。(中略)ポクランはまた、危機が独自の個人と個性の集合で成り立っている、とも述べている。(中略)危機は人びとによって作られる。人びとはそれぞれの偏見と性癖と素質をかかえて危機に突入する。危機は直感と盲点の集積であり、認識された事実と無視された事実との混成物である。しかし、危機それぞれの独自性のもとにはおどろくべき類似性がひそんでいる。すべての危機に共通する特質の一つは、かえりみて充分に予測可能だという点である。どの危機もある不可避性を持ち、あらかじめ運命づけられていたように見える。
アンドロメダ病原体 / マイクル・クライトン
「すべての危機に共通する特質の一つは、かえりみて充分に予測可能だという点である」という言葉を過去に起きた事故や災害などに当てはめると、かなりの部分で該当するといいう感じがします。
先日、4月の訪日外国人旅行者数が前年同月比99.9%減の2900人だったという報道がありました。ほぼ全滅って...。
ここ数年、インバウンド頼りの政策がいろんな意味で危険であるという内容の警告をしていた人は何人かいましたが、その通りになっています。
この本でクライトンが語っているポクランという学者やその著書が実在するのか検索してみましたが、わかりませんでした。
クライトン自身の言葉なのかもしれませんが、なかなか含蓄のある言葉です。
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