【読みだしたら止まらない本 16 】暗号名スイス・アカウント / ポール アードマン
ナチス・ドイツが各国から略奪した金がスイスに運ばれ、戦費にあてられている? アメリカは後のCIA長官アレン・ダレスを長としてその調査に乗り出す。一方、スイスの反ナチ派はドイツの侵攻を恐れ、情報をアメリカに求めた。ナチスと連合国に挾まれ、双方に戦争協力を余儀なくされながら自国の生存の道を探るスイス。第二次大戦下の中立国で繰り広げられた熾烈な情報戦を描く。
作者のポール・アードマンはカナダで生まれ、スイスのバーゼル大学で博士号を取得。バーゼルのユナイテッド・カリフォルニア銀行の責任者となった後、投機に失敗して巨額の損失を出してしまい、詐欺罪で投獄されて獄中で書いた「十億ドルの賭け」で米探偵作家クラブ最優秀新人賞を受賞したという異色の経歴の持ち主。
第二次世界大戦末期の1944年5月、スイス空軍がナチス・ドイツからメッサーシュミットの戦闘機Me109・12機を一機50万フランで購入。
日本では平和の象徴のように語られる永世中立国・スイスが、第二次大戦下でナチスから戦闘機を購入? という驚きのプロローグから物語は始まります。
ナチスが周辺国から略奪した金が戦費としてスイスに送られているという情報を聞き、OSSのアレン・ダレスが調査を開始します。
一方、ライン川の川岸で不法入国しようとして逮捕された男が、小型の汽船でノルウェーからドイツに荷物を運んでいたという証言をします。運んでいたのはたったひとつの樽で、中身は水...
本書の主人公は作者の創造した人物ですが、銀行家や軍人などは実在の人物も多く登場し、のちにCIA長官になるアレン・ダレスも、CIAの前身であるOSSのスイスベルン支局長として出てきます。
また小説としては異例と思えるほど大量の原注で出典を明記しており、証拠書類の写真も掲載されています。
こういったことから、本書はかなり史実に基づいた内容なのだと思います。
永世中立を宣言すれば自動的に平和な国になると思っている日本人は少なくないかもしれませんが、スイスが第二次世界大戦中どういうことをしていたかを知る資料としても本書は貴重だと思います。
エピローグに登場する、当時スイス在住だった日本人の去就も興味深いところです。
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