【読みだしたら止まらない本 5】 消えたV1発射基地 /トニー・ケンリック
第2次大戦中、ドイツはフランス国内に80カ所のV1発射基地を設けた。戦後その基地はすべて発見され、破壊された、とされている。元ドイツ空軍の伍長にして熱烈なヒトラー崇拝者であったラウターが、V1発射基地が実は81カ所あったと知ったのは1955年のことだった…。
1978年12月、ロンドンの一画で爆発事故が起きた。ガス爆発かIRAの爆弾製造のミスか、と思われた。だが保険会社の調査員ペラムが、現場で奇妙な金属片を見つけた。分析の結果それはかつてV1専用に造られた推進装置の一部とわかった。“誰かが第2次大戦をやり直そうとしているのか!?” ペラムは愕然となった―名手ケンリックが新境地を拓く冒険サスペンスの力作。
作者のトニー・ケンリックは1935年オーストラリア生まれ。ユーモア・ミステリーの傑作「スカイジャック」などで人気の作家です。
「スカイジャック」はジャンボジェットが行方不明になるという物語でしたが、マレーシア航空370便が行方不明になったときにこの小説を思い出した人が少なくなかったようで、ブログ等で時々目にしました。
奇抜なプロットとスピーディーな展開、同業の作家が嫉妬するようなユーモア感覚、読みだしたら止められません。
──なぜアメリカへ帰らないかというんでしょう。耳にタコができるほど聞きましたよ。オスカー・ワイルドの引用でしたっけ?―─
ドイツのV1飛行爆弾。名前は知っていても形は見たことが無い方も多いかもしれません。
誰かが第二次大戦の続きをやろうとしている...爆発事故の原因を探るうち、あまりに突飛な結論を出して会社を首になったべラムは、スイス人ガールフレンドのロッシと真相を探り東奔西走します。
「じゃ私に話してみて。パズルは得意なの」
ペラムは溜息をついた。「今は振り出しに逆戻りさ。誰がV1を発射したかをつきとめるためにはどこから来たかをつきとめなければならず、どこから来たかをつきとめるためにはどうやってここまで来られたかをつきとめなきゃならない」
「あなた、私の英語力をためしてるの?」
残念ながらケンリックの本はほとんどすでに絶版のようです。
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