自動車メーカー各社の自動ブレーキ(衝突回避システム)と誤発進抑制(ペダル踏み間違い防止)を比較してみた

2019年6月19日

高齢の親が車を買い換えたいというので、いまどき車を買うなら自動ブレーキ(衝突回避システム、衝突被害軽減ブレーキ)が付いていないものはあり得ない、ということで各社の自動ブレーキを調べてみました。

衝突回避システムと運転支援機能は自動車メーカーによって多数のシステムがあり、とても全部は調べきれないので、自動ブレーキと誤発進抑制に絞って一覧を作ってみました。

機能一覧表はこちら

~注意事項~
ここに記載している内容は主に各メーカーのwebサイトに掲載されているものを元に、2017年2月時点で個人的に調べたものです。
同じメーカーの同じような名称の機能でもアップデートされていたり、機能に違いがある場合がありますので、購入を検討される場合はご自身で十分に調べてください。


自動ブレーキがあればこんなことには...

 

自動ブレーキ、誤発進抑制とは

自動ブレーキは主に追突防止、誤発進抑制はブレーキのつもりでアクセルを踏み続けて事故を起こすのを防止する機能です。最近は歩行者や自転車にも反応して減速するものも増えてきました。

ニュースでよく見聞きする脇見運転による事故、アクセルとブレーキの踏み間違い事故に対応するのはこれからの自動車としては最低限必要になるでしょうし、国土交通省が義務化を検討しているという報道もありました。
いずれにしても完全自動運転が実用化されるまでの間、人間の運転ミスを減らすシステムの普及が進むと思われます。

今回主に調べた対象は以下の通りです。

・自動ブレーキ:動作速度、対象物(車両、歩行者)
・誤発進抑制:対象方向(前方、後方)、障害物検知センサーの有無

自動ブレーキの方式

一口に自動ブレーキといってもさまざまな方式があり、レーザーやレーダー、カメラを組み合わせたものが一般的。
簡単に特徴をまとめると、

価格 天候 距離 歩行者
赤外線レーザー 安価 近距離 △ or ×
ミリ波レーダー 高価 中~遠距離 ×
カメラ(単眼 or ステレオ) 中~高価 近距離~遠距離

というような感じです。ひとつの方式ですべてをカバーするのは困難なので、カメラとレーダーを組み合わせたものが増えているようです。

 

 

自動ブレーキの弱点

自動車メーカーが自動ブレーキの搭載を始めたころ、交差点の右折で対向車に過剰に反応してしまいブレーキがかかったというような話がありました。
高速道路で危険がないのに自動ブレーキが作動して追突されたというような話もあります。

また、国産車の多くは自動ブレーキの作動中にアクセルを全開にすると、ドライバーの意思で全開にしていると判断し、自動ブレーキの作動をキャンセルするシステムになっているようです。ドライバーがパニックを起こしてアクセルを踏みつけているのかどうかまでは判断できないということです。

そういった弱点もありますが、総合的には付けているほうが助かるケースが多いのではないかと思われます。
また自動ブレーキを切るスイッチはたいてい付いていると思いますので、どうしても信用できない場合は使わないという手もあります。

見落としがちな点としては、夜間に動作しない(ボルボは明記、他のメーカーは動作しない場合でも記載していない可能性あり)、ワイパーを低速以上で動かすと動作しない(ダイハツ)、ホイールかタイヤサイズを変えると動作しない(スズキ?)というような注意点があります。

自動ブレーキの問題点

自動ブレーキには少なからずコスト高になりますので、価格の安い車種のほうが性能が低く、装着率も低くなるのはある程度しかたがないのですが、ペダル踏み間違い事故を起こすのは20代と60歳以上が多いという統計があり、この年代は低価格車の需要が多いと思われ、必要な世代に必要な装備が無い、という状況が生じやすくなります。

また、高齢者である程度の資金があっても、安全装備で車を選ぶと車体が大型化してしまって運転しにくくなるという難点もあります。
例えば今回候補に挙げたスバル・インプレッサは全長4460mmはともかく、幅が1775mmもあり、取り回しが良いとは言えません。
軽自動車やA~Bセグメントの安全装備の充実が望まれます。

もうひとつ、現時点では後退時のペダル誤操作(アクセルべた踏み)でエンジン出力を抑える機能は比較的多くの車種で装備できますが、後退時の自動ブレーキを装備できる車種はあまりありません。
統計的には後退時の事故もかなり多いようなので、後退時の自動ブレーキの普及も期待したいところです。

購入時の注意点

自動ブレーキは進歩が早い分、旧式の陳腐化も急速に進みます。同じメーカーで似たような「自動ブレーキ」を謳っていても発売時期で性能に差がある可能性もあります。
中古車を買うときなども同じようにに注意が必要です。

サポカー

セーフティ・サポートカー(サポカー)とは、政府が交通事故防止対策の一環として、自動ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置等を搭載した車(安全運転サポート車)に 「セーフティ・サポートカーS(サポカーS)」の愛称をつけたものです。

サポカーSは自動ブレーキの機能に応じて、 以下の3つの区分があります。

ワイド 自動ブレーキ(対歩行者)、ペダル踏み間違い時加速抑制装置※1、車線逸脱警報※2、先進ライト※3
ベーシック+ 自動ブレーキ(対車両)、ペダル踏み間違い時加速抑制装置※1
ベーシック 低速自動ブレーキ(対車両)※4、ペダル踏み間違い時加速抑制装置※1
  1. ※1 マニュアル車は除く。
  2. ※2 車線維持支援装置でも可。
  3. ※3 自動切替型前照灯、自動防眩型前照灯又は配光可変型前照灯をいう。
  4. ※4 作動速度域が時速30km 以下のもの。
  5. ※5 将来、技術の進化や目的に応じ、「安全運転サポート車」の対象装置の拡大を想定。
  6. ※6 このほか、高齢運転者による事故の防止に効果がある技術についても、各社の判断で安全運転サポート車の機能として追加し、普及啓発に活用することができる。

それぞれの区分は大雑把で、例えばペダル踏み間違い時加速抑制装置が車の前後にあるのか、前だけなのかというようなところまでは把握できません。
自動ブレーキが対車両のみか、歩行者にも対応しているかなどで購入候補の最初の絞り込みには参考になります。

ASV

ASVというのは「Advanced Safety Vehicle(先進安全自動車)」の略で、被害軽減ブレーキ試験と車線逸脱抑制試験、後方視界情報の試験を行います。
試験の得点が12点を超えると「ASV+」、46点を超えると「ASV++」となります。


2017年度から車線はみ出し警報試験が車線逸脱抑制試験へと強化され、総合得点の満点が前年度の71点から79点に変わりました。

79点満点で46点を超えると「ASV++」という最高評価になるので、スズキ・ワゴンRの58.9点でも、日産ノートの79点満点でも、評価として表示されるのはどちらも「ASV++」です。

ちなみにJNCAP(独立行政法人自動車事故対策機構)による2017年度の結果は以下の通りです。

1位  日産ノート 79点 ASV++
2位  マツダ CX-5 78.5点 ASV++
3位 ホンダ N-BOX 76.6点 ASV++
4位 スバル レヴォーグ 76.5点 ASV++
5位 トヨタ C-HR 74.4点 ASV++
6位 ホンダ フィット 65.5点 ASV++
7位 三菱 アウトランダーPHEV 63.2点 ASV++
8位 スズキ ワゴンR 58.9点 ASV++
9位 トヨタ ルーミー 30.6点 ASV+(スマートアシストⅡ)

自動ブレーキ装備車は任意保険が安くなる

2018年1月から自動ブレーキ装備車は任意保険の割引(ASV割引)が適用できる場合があり、対象になっていれば9%割引されます。

自家用の軽自動車は毎年9%の割引になりますが、普通車は型式が登録されてから3年という期限があり、対応していない保険会社もありますので、自動ブレーキがあれば必ずしも割引が適用になるというわけではありません。

https://takmiya.com/automobile-safety-system-insurance/

 

 

アイサイトは最強か?

スバルのアイサイトは自動ブレーキのパイオニアで最先端というイメージがあり、今回調べ始めたのもアイサイトからでした。
調べてみると、カタログスペック的には必ずしも最強とは言い難いというのが結論。
理由としては、フロントはステレオカメラのみでレーダーなどを併用しておらず、天候に左右される不安が残る点と、リアにセンサーがなく後ろ方向のペダル誤操作はアクセルの踏み込み量だけで制御しているらしいことと、後退時の自動ブレーキが無いこと(※)。
とはいうものの、追突事故が84%減少とメーカーが謳っているように事故防止効果の実績はかなり高いようです。
また、調べた時点では自転車にも対応しているのはスバルとボルボのみでした。

※2017年7月マイナーチェンジのレヴォーグから後退時自動ブレーキ搭載

最強スペックはマツダ?

2016年12月に国土交通省が行った「対歩行者自動ブレーキの評価試験」で、マツダ・アクセラが最高得点を出しています。

マツダの安全装備は名称が山ほどあって非常にわかりにくいのですが、スバルのアイサイトには装備されていない前方のレーダー、後方のセンサーや後退時の自動ブレーキもあり、全部装備した場合はカタログスペック的には現時点で最強な感じです。
ただし車種によっては全部付けようとすると自動的に上級グレードになってしまいます。

トヨタも優秀な誤発進抑制システムがありますが、マツダは大半の車種に後退時の自動ブレーキまで搭載できるのに対し、トヨタは搭載できる車種が限られるのが難点。

マツダの場合、自動ブレーキの性能云々の前に、アクセルペダルをOEM以外オルガン式に統一し、右足をまっすぐ伸ばした「あるべき場所」にアクセルペダルがあるといった、基本的なレイアウトが適切になされています。
変な位置にペダルがある車が少なくない中、こういったあまり注目されない部分を大事にするマツダの姿勢には好感が持てます。

ただし...
マツダ車はデザインを優先するあまり後方視界を犠牲にしている車種が多いので、必ず実車で確認したほうが良いです。

輸入車は差が激しい

外車はボルボやメルセデス・ベンツのように安全がセールスポイントであり安全装備も充実しているメーカーから、ほとんど何もないようなメーカーまであり、かなり差があります。

また新しく安全装備ができてもそれが日本仕様に反映されるまで時間がかかったりするので注意が必要です。

日本車との大きな違いは、誤発進抑制を謳っているものが調べた限りではひとつもないところ。

おすすめは?

個人的に選ぶのであれば、以下のどれか。
・トヨタの「Toyota Safety Sense P」+「インテリジェントクリアランスソナー」
・スバル・アイサイト
・マツダの全部盛り
・軽・小型車で後方の誤発進抑制が欲しければダイハツ「スマートアシスト」の3型、いらなければスズキの「デュアルセンサーブレーキサポート」

どれがおすすめかというのは、難しいです。歩行者対応と後方の誤発進抑制の有無がポイントでしょうか。

メーカー別の特徴

トヨタ

自動ブレーキは「Toyota Safety Sense C」と「Toyota Safety Sense P」のふたつ。「C」は低価格車用で歩行者には非対応。「P」は中~高価格車用で歩行者にも対応。
スペック的にはあまり高性能な感じはしないが「対歩行者自動ブレーキの評価試験」の結果は優秀。
誤発進抑制は「インテリジェントクリアランスソナー」がある車種が限られる。
誤発進抑制に近い機能でドライブスタートコントロールというのもあるが「後退時に衝突後、前方に急発進した場合」という条件で動作する。
軽と小型車でダイハツのOEM車はダイハツと同じ。

日産

「エマージェンシーブレーキ」にカメラとレーダーの2種類がある。性能的には中~下位クラス。
「踏み間違い衝突防止アシスト」を装備できる車種は少ない。
軽自動車は三菱と同じ。

※2017年度のJNCAP予防安全性能アセスメントでノートが79点満点を獲得

ホンダ

普通車用の「衝突軽減ブレーキ(CMBS)」(Honda SENSING)と軽・コンパクトカー用の「シティブレーキアクティブシステム」の2種類。性能的には中~下位クラス。

※2017年度のJNCAP予防安全性能アセスメントでN-BOXが76.6点(79点満点)を獲得

マツダ

前方向用の遠距離用「スマート・ブレーキ・サポート」・前方・後方の近距離用「スマート・シティ・ブレーキ・サポート」。車種により機能が異なる。

スペック的には全方向対応な感じで安心感はある。対歩行者自動ブレーキの評価試験の結果も良く、年改で新型のシステムを積んでくるものが多い。デミオの旧型引継ぎは残念。
機能が細分化されすぎていてわかりにくい。
グレードによってオプション設定のないものが多いのも難点。
軽自動車はスズキと同じ。

※デミオ 2017年11月 アドバンストSCBSにアップデート

スバル

「アイサイト」は実績もあり安心感もかなりのもの。前方にレーダーも装備し、後方の自動ブレーキが付けば完璧か。
軽自動車はダイハツと同じ。

※2017年7月マイナーチェンジのレヴォーグから後退時自動ブレーキ搭載

三菱

レーザーレーダー+単眼カメラの「低車速域衝突被害軽減ブレーキシステム[FCM]」でも性能は下位クラス。
スズキのOEM車はスズキと同じ。

ダイハツ

「スマートアシスト」の無印・2型・3型の3種類。2と3は後方の誤発進抑制があり、3は歩行者も対応。
無印と2型の難点はワイパーを動かすと動作しなくなるところ。3型は軽自動車としてはかなりよさそうなシステムだが現時点でタントしか搭載されていない。

※2017年5月、新型ミライースにスマートアシスト3を搭載
※2017年11月時点でキャスト、キャンバス、ムーブ、アトレーワゴン、ハイゼットカーゴに拡大

スズキ

「レーダーブレーキサポート」の無印と2型、「デュアルカメラブレーキサポート」と「デュアルセンサーブレーキサポート」の計4種類。
「デュアル~」は歩行者も対応。後方の誤発進抑制が無いのが残念。

※2017年12月 スペーシアのフルモデルチェンジで後退時ブレーキサポート、後方誤発進抑制機能を搭載

輸入車

ボルボとドイツ車は安全装備が充実しているがフランス車とイタリア車は貧弱。新型アルファロメオ・ジュリアの自動ブレーキはドイツ車並みになっているようなので今後に期待。
輸入車は誤発進抑制が無いようなので購入時は要確認。

日本に輸入されておらず、将来的にも可能性の少ない中国車と韓国車も、海外のテスト動画などを見ると確実に進歩しており、現時点で残念な感じのするものが多い日本車より優秀と思えるものもある。
そのうちこの分野も追い越されそうな気が。

参考

http://www.nasva.go.jp/mamoru/active_safety_search/list_all.html

http://www.nasva.go.jp/news/2016/161201.html

 

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